勝ち筋を、自分たちの手で設計する

──PMF後のシフトメーションが、エンタープライズで「売り方」をどう作っているのか

スタートアップが「売れるプロダクトを作った」その先に必ず直面する問いがある。それは「では、どう売り続けるか」ではなく、「この市場で勝つとは、そもそもどういうことか」だ。

PMFを越えた後の景色は、PMFを目指していた時とまるで違う。顕在化されたニーズを取り切れば伸びていたフェーズが終わり、潜在課題を掘り起こし、それを意思決定可能な形に翻訳し、複数のレイヤーを同時に動かさなければ受注に至らないフェーズに入る。プレイヤーの強さだけでは届かない領域だ。

シフトメーションは、シリーズAを経て、まさにそのフェーズの真ん中にいる。5500を超える事業所にすでに導入され、国立病院や上場企業といった大規模法人の比率も増えてきた。プロダクトの価値はもう証明されている。次に問われているのは、「この市場で再現性をもって勝つGTM(Go-To-Market)を、どう設計するか」だ。

その設計の現場にいるのが、事業推進部 マネージャー(シニアアカウントエグゼクティブ)の福島だ。これまで多様な業界で法人営業に深く向き合ってきた経歴を背景に、シフトメーションへ入社後はエンタープライズ営業の最前線に立ち、有償トライアル本導入率70%超という実績を積み上げてきた。

「営業の仕事の説明をする回」にはしないでください、と本人が言う。代わりに「シフトメーションのGTMの面白さ」を語ってほしい──そう前置きから始まった60分の対話を、再構成してお届けする。


シフトという「言えば刺さる」がない市場で、誰に何を売っているのか

━━まず大前提として、シフトメーションの営業の難しさは、どこにあるとお考えですか。

福島 「これさえ言えば顧客に刺さる」というキラートークが、定まっていないんです。これがシフトメーション営業の、最も難しいところであり、同時に最もおもしろいところだと思っています。

シフトという業務は、同じ法人の中であっても、事業所ごと・施設ごと・店舗ごとに運用がまったく違います。介護法人を1社受注したからといって、隣の介護法人にそのまま同じ提案が刺さるかというと、まずそんなことはありません。現場が違えば、課題も、優先順位も、誰がボトルネックになっているのかも変わる。「このトーク一発」で売り切れる商材ではないんです。

━━法人ごと・現場ごとに異なる、という前提で営業を組み立てるのは大変じゃないですか。

福島 大変です。ただ、その大変さこそが市場の本質だと思っています。

もう一つ難しいのは、お客様が抱えている課題自体が、ほとんどの場合「顕在化していない」ことです。シフト作成にかかっている膨大な時間や、現場の不公平感、属人化のリスク──これらは確かに存在しているのに、見えていない。サービス残業や持ち帰り作業に吸収されて、コストとして可視化されていないケースが本当に多いんですよ。

だから、いざ業務効率化のプロジェクトが始まっても、シフトは「優先順位」が下げられがちです。請求業務や勤怠管理のように、直接的に数字に現れる領域に比べて、シフトはいったん後回しにされやすい。「困っているはずなのに、困っていることに気づかれていない」というのが、私たちが日々向き合っている市場の構造です。

━━では、何が導入の障壁になるのでしょうか。

福島 障壁を作っているのは、「課題の解像度のばらつき」です。

現場の管理者の方は、シフト作成にかかる時間や、毎月の調整のストレスを痛切に感じています。一方、経営層に上がると、それが「経営課題」として認識されているケースはむしろ少ない。「現場が頑張ってくれているから、別にそこまで困っていないのでは」と捉えられていたりする。逆に、経営層が人手不足や離職率に強い危機感を持っていても、現場側が「それはシフトの設計で解決できる課題だ」と気づいていない、というパターンもよくあります。

つまり、レイヤーごとに見ている世界がバラバラで、誰もが少しずつ正しいのだけれど、ピースが揃っていない。営業の仕事は、その揃っていないピースを並べ直して、「これは、この組織にとって、いま取り組むべき経営課題なんだ」と認識を揃えてもらうところから始まります。

━━単なる「工数削減ツール」として売ってしまったら、どうなりますか。

福島 ほぼ確実に失敗します。

仮にお客様の課題が「シフト作成に時間がかかること」だとしましょう。Shiftmationを入れて、その時間が3分の1になった。素晴らしいことですよね。でも、ここで必ず問わなければいけないのは、「では、その浮いた時間は、いったい何に使われるのか」なんです。

そこが描けていないと、お客様の中で投資対効果が合いません。「忙しさが少し減りました」だけだと、月額のSaaSコストを払い続ける理由にならない。私たちが提案しているのは、シフト作成の時短ではなく、「シフト作成という業務の中に閉じ込められていた管理者の力を、現場のマネジメントや人材育成に解放する」ことです。これは、現場の生産性、定着率、ひいては経営指標に効いてくる話で、ここまで一緒に描けて初めて、決裁のテーブルに乗ります。

━━誰がキーパーソンで、誰が実質的な意思決定者ですか。

福島 これも一筋縄ではいきません。

シフトを実際に作っているのは、各現場の管理者クラスの方です。一方、SaaS導入の意思決定権を持っているのは、法人本部の人事部長や経営企画、場合によっては理事長・役員クラスです。

両者は同じ法人の中にいるのに、見えている景色がまったく違います。一見すると噛み合っていないようにすら見える。でも、よくお話を聞いていくと、その先にあるゴール──「現場が回り続けること」「人が辞めないこと」「収益が上がること」──は、全員が同じ方向を向いているんです。

その「最終的には同じ方向を向いている」ことを、複数のステークホルダーの間で言語化して接続することが、私たちのエンタープライズ営業の核心です。シフトメーションの営業は、顧客の組織構造を理解し、現場と経営の言語を翻訳し、導入後に価値が出る状態まで見据えて合意形成する仕事です。


なぜ、いまシフトメーションが「勝てている」のか

━━国立病院や上場企業を含む大規模法人に対して、有償トライアルの本導入率70%超という数字を出せています。なぜでしょうか。

福島 顧客が何に困っていて、どうしたいのか、どうあるべきなのかに、深く伴走しているからだと思います。

もちろん、プロダクトの機能は重要です。ただ、今ある機能をそのまま売るだけではありません。お客様が「欲しい」と言うものと、本当に必要なものは違うことがあります。むしろ、お客様自身もまだ本質的な課題に気づいていないことが多い。

そこで、言われたことをそのまま受け取るのではなく、「なぜそれが必要なのか」「本当は何を変えたいのか」「その先にどんな状態をつくりたいのか」を掘り下げる。そこにシフトメーションらしさがあると思います。

━━競争優位はどこにありますか。

福島 顧客の業務に深く入り込んで、現場と経営の両方を見ながら提案できることです。

Shiftmationは、単に「シフト作成時間を削減するツール」として売るだけでは価値が伝わりきりません。現場の負荷、管理者の役割、スタッフの納得感、離職や採用、サービス品質、人件費など、複数の論点をつなげて提案する必要があります。

そこまで踏み込むからこそ、お客様の中で優先順位が上がる。単なる便利ツールではなく、現場運営や人材活用のあり方を変える提案として受け止めてもらえる。

競争優位は、機能単体というよりも、顧客の構造を理解し、複数のレイヤーをつないで価値を伝えられることにあると思います。

機能で勝負しようとすれば、いずれ追いつかれます。価格で勝負すれば、消耗するだけ。私たちが勝てている理由は、機能でも価格でもなく、「お客様の課題を、お客様より深く言語化できる」ことです。

━━これからGTM上で伸ばすべき論点は、何だと考えていますか。

福島 マルチプロダクトです。

Shiftmationは、HR領域の数ある課題の中の「シフト」という一つの打ち手にすぎません。でも、HRの課題は採用、教育・研修、リテンション、配置・異動と、本当に幅広い。お客様と深くお付き合いするほど、シフト以外の課題にも一緒に向き合いたくなる場面が増えてきます。

シフトという入り口で築いた信頼関係を、より広いHR課題への打ち手へとどう広げていけるか。これがこれから先の、GTMの最大の論点だと思っています。今いるメンバーで、その地図を一緒に描いていきたいんです。


「売り方」を、組織として再現可能にする

━━いま、営業組織として作りたい再現性は、どこにありますか。

福島 「売ること」ではなく、「使い続けていただける状態に持っていくこと」の再現性です。

営業の受注は、お客様とシフトメーションの関係の中でいうと、ゴールではなく、ようやくスタートラインに立った瞬間でしかありません。そこから先、お客様が運用に乗せて、現場が回り、価値を実感し、社内に広がっていく──ここまで含めて「営業の成果」だと考えています。

だから、私たちが作りたい再現性は、「クロージングのトーク」ではないんです。「導入してすぐ、お客様が使いたくなる状態」をどう作るか。そこに営業が、提案フェーズからどう関与するか。これを型にしたいと思っています。

個人として成果を出すことはもちろん大事です。ただ、それだけではなく、自分が見つけた勝ち方を、次のメンバーが再現できる形に落とし込む。顧客理解、商談設計、合意形成、CS連携、導入初期の成功までを、組織の資産にしていく。

この経験は、今のフェーズだからこそ得られるものだと思います。

━━その型を一緒に作れる人は、どんな人ですか。

福島 5つあると思っています。

1つ目は、これまでの経験を活かしつつ、必要なら捨てられる人。前職で成功した型をそのまま持ち込むだけだと、シフトメーションでは通用しません。経験は当然大事ですが、それに固執しない柔軟さとの両立が必要です。

2つ目は、継続学習ができる人。シフトメーションの周辺には法令、業界慣習、組織心理、最適化アルゴリズム、SaaSのGTM戦略──本当にたくさんのテーマがあります。これらをずっと学び続けられる人でないと、お客様の前で「深さ」を出せません。

3つ目は、顧客や業界に感情移入して、自分事化できる人。介護・医療・宿泊・小売──私たちのお客様は、日本社会の根幹を支えている方々です。その方々の現実を、自分自身のことのように想像できる人と一緒に働きたい。

4つ目は、限られた情報からイメージを描いて、仮説を立てられる人。エンタープライズの提案は、最初から情報がすべて揃っていることなんてまずありません。断片的な情報をつなぎ合わせて、「この組織はおそらくこういう構造で、こう動かせば動く」という仮説を組み立てられることが必須です。

5つ目は、自社プロダクトの理解の深さに執着できる人。Shiftmationには本当にたくさんの機能があり、できることが山ほどあります。それを表面でなぞるのではなく、お客様の業務に重ね合わせて、「この機能はこの現場のどの場面で効くか」を自分の言葉で語れるレベルまで持っていく。ここを軽く扱うと、お客様の前で語れる解像度が出ず、信頼の入り口で終わってしまいます。お客様は、自社プロダクトを浅くしか語れない営業に、本当の困りごとを話してくれません。


未完成だからこそ、事業づくりに深く関われる

━━いま入る方に、どんな役割を期待していますか。

福島 ひと言で言うなら、「圧倒的な行動量で、型を作る」ことです。

繰り返しになりますが、まだ型がありません。だからこそ、自分の手と足で動いて、お客様に当たって、何が効いて何が効かないかを見極めて、それを言語化していく──ここを担えることが、最大のミッションです。

━━1年後にはもう埋まってしまう、いまだからこそ手に入る経験は何ですか。

福島 「個人スキルの高さ」を、「組織の型」に変換していく経験です。

この1年は、組織の成長余地に対して、自分の関与割合が最も大きいタイミングだと思います。これから組織が大きくなれば、役割もプロセスも徐々に整っていきます。それ自体は良いことですが、今ほど自分の意思決定や行動が、会社の成長に直接反映されるタイミングは多くありません。

一流のプレイヤーとして成果を出すことと、組織構築を同時に経験できる環境は希少です。自分の貢献が、顧客の成功にも、会社の成長にも、営業組織の再現性にもつながっていく。その手触りを強く感じられるフェーズです。

━━最後に、どんな方に会いたいですか。

福島 ビジネスにずっとコミットしてきた方の中で、「社会課題の解決」に本気の想いを持っている方に、ぜひお会いしたいです。

私たちが向き合っているのは、医療、介護、宿泊、小売など、社会を支える現場の課題です。そこで働く方々の負担を、本気で軽くしたい。その上で、ビジネスとしてもしっかり勝ち切る。社会性と経済性は、トレードオフではなく、両立させるべきものだと思っています。

「想いだけ」でも、「数字だけ」でもなく、その両方を高い水準で並走させたい方にとって、今のシフトメーションのGTMは、最高におもしろい場だと自信を持っておすすめできます。一緒に、勝ち筋を作っていきましょう。

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